筆者自身が数十年前に新卒採用で入社した会社を3週間で辞めた経験を踏まえ、新卒採用者の退職が現在増加傾向にある理由についての考えを述べてみます。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 新卒採用している会社の経営者や人事担当
私が新卒で入社した会社を3週間で辞めた理由
もう20年以上前、私は就職氷河期になんとか新卒で入社しましたが、3週間で退職しました。
理由は、仕事がまったく面白くなかったことと、先輩方がやっている仕事にも魅力を感じなかったためです。
職種は求人広告会社の「広告企画営業」。当時はまだネットが創世記だったため、紙媒体の求人広告でした。
制作や企画に興味があり、内定をもらったときは嬉しかったのですが、実際は「営業」で、広告自体の制作や企画は別担当がいました。
さらに、私の担当エリアは需要が少ないエリアだったこともあり、ほとんど広告を作る機会もなく、電話帳の上から電話をかけ続けることを指示されました。
今思えば、特定の指導する社員もおらず、OJTもなく、何のためにそれをやるのかという教育もなかったので、会社側には改善の余地は多くありました。また私自身も上長へ相談することもできたと思うのですが、その発想自体がありませんでした。
また、当時はほぼ個人に委ねられていた就職活動で、なんとなく広告業界がおもしろそうだな、くらいの軽い浅い気持ちで、厳しい氷河期にゆるい就活をしていたダメダメな私です。
初めの給料日まで会社に行って、その日に退職届を出して終了でした。
私の黒歴史で履歴書にも書いていない社歴です。
新卒採用者が辞める理由は採用担当と実務担当が別人だから
4月に退職した私は、5月にIT会社に再就職しました。
実家に居ても、母親から掃除機でガツガツされ、いたたまれなかったこともあります。
その後、出産で一時仕事から離れたものの、正社員や派遣社員、パートなど、いろいろな形態でいろいろな職場で仕事経験をしてきました。
そのため、採用面接も複数社で経験がありますが、自身の経験から、入社前に実際に一緒に仕事をする人と面接できる機会があると、仕事のイメージも湧きやすいと実感しています。
新卒や大きな会社ほど採用面接では採用担当者や役職者と話すものの、いざ入社して配属されたところは初対面の人ばかりで、配属先の既存メンバーは、その新人を「自分たちが一緒に仕事をしたいと思った人」ではなく「会社が採用した人」と認識しており、新人にとっても入社前に「一緒に働きたいと思った人たち」ではありません。
この違いは大きいと思います。
一方、中途採用の場合は、不足している従業員の補充なので、目的に合った人物を採用する必要があるため、早い段階でその実務部署の直属上長などと面接します。
そのため、お互い「この人といい仕事ができそうだ」となれば、採用・入社となり、初めの段階でのミスマッチは防ぐことが可能です。
配属された職場が新人を迎える体勢になってないから
新卒だけではないですが、新しい人が職場に配属される時、なぜその人がここに配属されたのか、この職場で何をその人に達成して欲しいか、そしてそのために既存メンバーは何をするべきか、それは会社にとってどういうメリットがあるのか、など共有されている必要があると私は思います。
しかしこれができている職場は、私が今まで出会った職場では皆無です。
「今日、新人配属されるらしいよ」「へー、興味ない」「自分には関係ない」
そんな職場に配属される新人は幸せでしょうか。
現場を知らない部署の上長が人事権だけで適当に新卒2名をピックアップし、職場に戻り「新人2人来るから、あとはよろしく」と丸投げするのもよろしくありません。
新人を職場に迎えるとき、上長はその新人社員に対して何を期待しているか、それは業績の何に影響を与えるのか、を具体的に新人社員と既存社員にも説明する必要があります。
できれば、新人育成計画を作成し、職場で共有し、さらに職場で関わる全ての既存メンバーに当事者意識を持ってもらうために、役割を与えるとよいでしょう。もちろん仕事が増えるので、反発が出る可能性もあります。そのため上長は、期待すること、メンバーの成長にどう結びつくかなど、各メンバーの特性に合わせて伝える必要があります。
これができる職場だけ新卒を配属し、これを実施する余裕がない職場には新卒は配属しないという判断が必要になるでしょう。もちろん会社は新人育成を担った部署の評価を上げることも必要でしょう。「人を育成して戦力にする」ことが出来た部署(チーム)はもちろん成果を上げているはずですが。
ただ、人数や年齢構成等だけで新卒をモノのように配置するのではダメなのです。
実際の仕事がおもしろくないから
これは採用された側からの理由ですが、実際の会社の仕事が期待していたほど面白くないことも理由のひとつです。
今、組織で働いているみなさん、仕事おもしろいですか?
特に大きな会社ほど仕事が細分化されていて、華やかな職場の表舞台の人は面白いかもしれませんが、スポットライトが当たらない裏方は面白くないことが多いです。表舞台に立っているように見える人も、ライトが当たってない仕事の割合も多いのが実情ではないでしょうか。
これは勝手に期待しすぎた新人側の責任もありますが、これを防ぐには面接時などにお互い正直に実際の仕事について認識合わせをする必要があります。
新人側はとにかくこの会社にさえ入れればどんな仕事でもよい、と思っているのか、こういう仕事をしたいと希望があるなら正直に言うべきで、会社側もそれが実現可能か、可能であれば何年くらいの経験が必要なのか、など伝えるべきです。
会社側も優秀な人に入ってもらいたい気持ちが優先し、最初の3年は簡単で退屈な事務作業がメインであることを伝えないかもしれませんが、伝えましょう。
新人側も会社側も同じ絵を描けると、相思相愛で、入社後に何か違うと思っても話し合うことができるでしょう。
対話しましょう。
第二新卒市場が活況だから
今、人材会社が膨大な数になっており、特に第二新卒市場は活況です。
日本の企業は相変わらず若者を採用したがるので、新卒ではなくても20代半ばくらいまでならまだ俺色に染められるだろうと思っている会社は多いのです。
そして、若者側も新卒では入れなかった大手企業が第二新卒としての募集をかけているのを知れば、再チャレンジしたくなります。
実際、特に外資系などは、社会人経験がある若手を積極的に中途採用する傾向があります。
また成長願望が高い人ほど、新卒で1年程度働き、その職場での先輩や上長の能力等を観察し、ここで働き続けるべきかを自身に問うでしょう。
私が実際、コンサル会社ビッグ4と呼ばれる企業で働いていた20代男性と話した時、彼が転職した理由は「前の会社で学べることは全部学んだ。もうここにいる必要がないと思ったから」とのことでした。
私はこの考えに賛成です。
成長を求めて、変化を恐れず行動を起こす人が、私は好きです。
成長意欲が高い優秀な若者を惹きつけておくのはなかなか大変です。
これに対する対策は、「新卒は辞めるもの」と割り切り、なので新卒採用は資金に余裕がある大手に任せ、自社は通年採用を一般化すると方針転換することを提案します。
新卒にこだわらず、「ここで働きたい」「一緒に働きたい」と思ってもらえる職場にする。
これしかないと思います。
そのためには、既存社員が働いていておもしろいと思う職場にする必要があります。
職場の先輩がかっこよく楽しそうに働いていたら、新人は自分も「ああなりたい」と思うでしょう。
逆に「ああはなりたくない」と思ったら辞めるでしょう。
現在働いている人がワクワクする職場。
そんな職場は魅力的です。
今の50歳前後から上の世代が多い職場は、なかなか移行は難しいかもしれませんが、30代以下の世代で構成されているベンチャーなどは、この傾向は高いと思います。
一般的に、今の日本では
1日8時間、1週間で40時間、1ヶ月で160時間、1年で1920時間
も働くのです。
お金のためだけにこの時間を使うのはもったいないです。
少しでもワクワクできる時間にしましょう。
まとめ
若者が自身の成長を求めて行動を起こすことは、私は賛成なので、特に20代の若者が、過去の自身の決断を覆し行動を起こすことは、健全であり、希望を持てることだと思います。
そのため、上長はメンバーが転職することを前提に、どうすれば自社でその能力を発揮してくれるか、という視点でメンバーと一緒に考えることが必要です。
新人が辞めてしまう職場はつまらない職場、対話のない職場なのです。
それを自覚し、改善するところから始めましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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